あなたは「口ぐせ」通りの人間になる。思考が現実を形成する、極めてシンプルな法則

ふるいにかけられた思考 幸福論

あなたの人生は「偶然」の産物ですか? それとも「必然」の結果ですか?

私たちは人生における様々な出来事を、しばしば「運」という言葉で片付けてしまいがちです。「運が良かったから成功した」「ついてなかったから失敗した」と。まるで私たちの人生が、自分ではどうしようもない大きな力にあやつられているかのようです。

しかし、もしその「運」と呼ばれるものの正体が、あなたが日々無意識のうちに繰り返している「口ぐせ」や「考え方のクセ」が作り出した、とても理屈に合った「結果」だとしたらどう思いますか?

この記事では、「運がいい」「運が悪い」といった曖昧な考え方をいったん脇に置いて、あなたの「思考」がどのようにあなたの「現実」を作り上げていくのか、その具体的な仕組みを脳の働きや心の科学にもとづいて解き明かしていきます。

これは気休めの言葉や根性論ではありません。今この瞬間も働き続けている、誰にでも当てはまる「心のルール」についての話です。この記事を読み終える頃には、あなたは自分の人生を、より良くデザインしていくためのヒントを掴んでいるはずです。


【第一章】無意識の思考が、あなたの可能性に「見えない壁」を作る

「なぜか物事がうまくいかない」と感じている人々には、共通した思考パターンが存在します。それらは自分でも気づかないうちに繰り返され、まるで、頭の中に動きをジャマする「悪いアプリ」を入れているように、あなたの脳の働きを制限し、行動にブレーキをかけてしまいます。ここでは、その代表的な思考とその影響について、具体的な例と一緒に見ていきましょう。

「どうせ自分なんて…」

この思考は、脳に「あなたは、他の人より劣る存在としてふるまいなさい」という、強力な思い込みを自分自身にかけてしまいます。この命令を受け取った脳は、あなたの価値を証明するような情報、例えば、仕事での成功のチャンスや、他の人からの嬉しい誘いを、無意識のうちに「自分にはふさわしくない」と判断し、気づかないうちに避けてしまうのです。

【具体例】
学校や職場で、新しいプロジェクトのリーダーを募集しているという話が出たとします。心の中では「面白そうだな」と思っても、「どうせ自分なんて…」という思考が動き出すと、「いや、もっとすごいAさんがやるべきだ」「自分なんかが手を挙げたら笑われる」という考えが次々に浮かび、結果的に、そのチャンスを最初から無かったことにしてしまいます。恋愛でも、素敵な人から食事に誘われた時に、「きっと何かの間違いだ」「どうせ自分に興味なんてないはずだ」と考え、自分から壁を作ってしまうような行動につながります。

「無理だ」「できない」

この言葉は、脳が問題を解決しようとする働きを強制的にオフにする「思考停止スイッチ」のようなものです。この言葉が浮かんだ瞬間、脳は「これ以上考えるのはエネルギーの無駄だ」と判断し、新しいアイデアや別の方法を探すといった、創造的な活動を一切やめてしまいます。

【具体例】
未経験の分野の仕事を頼まれた時、「これは自分の専門外だから無理だ」と考えた瞬間、脳は情報を集めたり、学びたいという気持ちを失います。もし「どうすればできるだろう?」と考えれば、インターネットで調べたり、詳しい人に聞いたりといった次の行動につながるはずが、「無理だ」の一言でその全ての可能性のドアが閉ざされてしまうのです。「英語が話せないから海外旅行はできない」と考えたりするのも同じです。

「ついてない」「最悪だ」

脳にはRAS(ラス)という、自分にとって「重要だ」と認識している情報だけを選び出す、アンテナのような機能があります。例えば、「赤い車が欲しい」と思っていると、街で赤い車ばかりが目につくようになるのが、このRASの働きです。
「最悪だ」という思考は、このアンテナの向きを「もっと最悪なこと、ついてないことを探し出せ」というモードに切り替えてしまうのです。

【具体例】
朝、寝坊してしまったとします。そこで「ついてないな」と思うと、RASが作動し、駅で電車に乗り遅れる、会社でコーヒーをこぼす、といったネガティブな出来事ばかりを敏感にキャッチするようになります。そして「ほら、やっぱり今日はついてない日なんだ」と、最初の思い込みをどんどん強くしていくのです。本当はその間に、友達からの親切や、ちょっとした成功もあったかもしれないのに、それらはアンテナに引っかからず気づくことすらできません。

「〇〇のせいだ」

これは、自分自身が学び成長するチャンスを自分の手で捨ててしまう行為です。脳は、行動とその結果をセットで分析し、「こうすれば上手くいく」「このやり方は失敗する」というパターンを学んでいきます。しかし、失敗の原因を自分以外の何か(他人や環境)に求めた瞬間、この学習プロセスは完全に止まってしまいます。

【具体例】
プレゼンが上手くいかなかった時、「聞いてる側の反応が悪かったせいだ」「準備時間が足りなかったのは、急に仕事を振ってきた上司のせいだ」と考えたとします。その瞬間、脳は「自分のプレゼンの内容や話し方には、改善するところはない」と結論づけます。これでは、次に同じような機会が来ても全く同じ失敗を繰り返す可能性が非常に高くなります。貴重な成長のヒントを自分でゴミ箱に捨てているのと同じことなのです。

「面倒くさい」

行動を起こす意欲、つまりモチベーションは、脳から出る「ドーパミン」という物質と深く関わっています。目標を達成した時の「嬉しい!」という感覚を想像することでドーパミンが出て、私たちは「やりたい!」と感じます。
「面倒くさい」という思考は、この「やる気」を生み出す脳の働きに直接ブレーキをかける力を持っています。目の前のタスクを「楽しいこと」ではなく「苦しいこと」と判断することで、脳が行動に必要なエネルギーを出すのをやめてしまうのです。

【具体例】
部屋の片付けをしようと思った時、「でも面倒くさいな」と考え始めると、途端に体が重く感じられます。これは、単なる「気分の問題」ではなく、実際に脳が行動へのGOサインを出すことをやめ、ドーパミンの供給を止めてしまっているからです。結果、ソファから立ち上がることさえつらくなり、自己嫌悪に陥る…という悪循環が生まれます。


【第二章】あなたの脳を最高の状態にする思考のツール

一方で、「物事がスムーズに進む」人々、つまり一般的に「運がいい」と見なされる人々は、脳の能力を最大限に引き出す、とても合理的な考え方の「道具」を自然と使っています。それは根性論ではなく、脳の仕組みから見ても非常に有効な方法です。具体的な使い方と共に、その秘密を見ていきましょう。

「まあ、なんとかなる」

この思考は、脳が「パニック」になるのを防ぎ「リラックス」した状態に切り替える、とても効果的な「合言葉」です。大変なことに直面すると、脳はストレスを感じ身を守ろうとします。しかし、この緊張状態が続くと、考えがガチガチに固まり視野が狭まってしまいます。
「なんとかなる」という言葉は、この過剰な緊張をほぐし脳をリラックスした状態に導きます。

【具体例】
突然、大勢の前でスピーチを頼まれたとします。「どうしよう、うまく話せるわけがない」とパニックになる代わりに、「まあ、なんとかなるだろう」と考えてみてください。肩の力が抜け脳がリラックスすることで、固まっていた思考が柔軟になり始めます。「そうだ、最初に簡単な自己紹介とジョークを言ってみよう」とか、「もし忘れても、正直に『緊張しています』と言えば、みんな笑ってくれるかもしれない」といった、前向きでクリエイティブなアイデアが浮かびやすくなるのです。

「とりあえず、やってみよう」

これは、脳を「失敗が怖いモード」から「何でも試してみる好奇心モード」へと切り替える、力強い「合言葉」です。私たちは、未知のことに対して「上手くできるか、できないか」という結果で判断されるのを恐れ、行動をためらいがちです。
「やってみよう」という言葉は、「結果はさておき、まずは試すこと自体が面白いんだ」と、脳に宣言するようなものです。

【具体例】
今まで使ったことのない新しいアプリや道具を導入する場面。「難しそうだな…」とためらう代わりに、「とりあえず、やってみよう」と触り始めてみる。すると、脳は「これはテストじゃない、ただの探検だ」と認識し、失敗への恐怖が薄れます。間違えても、「なるほど、ここはこうなるのか」と、全ての操作が学びや発見に変わります。この「実験」を繰り返すことで、気づけば誰よりもそのツールに詳しくなっている、ということが起こり得るのです。

「これも良い経験だ」

これは、ネガティブな出来事の意味をプラスのものに書き換える、脳の高度な編集機能です。通常、失敗は「脅威」や「罰」として認識され、私たちの自信を傷つけ、次の挑戦への意欲を奪います。
しかし、「これも経験だ」というフィルターを通すことで、脳はその出来事を「未来の成功に必要な貴重なデータ収集」として、とらえ直します。

【具体例】
一生懸命取り組んだ企画が上司にあっさりと却下されたとします。多くの人は「自分の努力が無駄になった」と落ち込むでしょう。しかしそこで「待てよ、これも良い経験だ。この結果から何が学べるだろう?」と考えてみるのです。「なるほど、上司は新しさよりも、確実なことを大事にするタイプなのか。次回はデータをたくさん用意して提案しよう」といった、具体的な学びが見つかります。失敗はもはや単なる痛手ではなく、次の成功率を上げるための「攻略情報」へと変わるのです。

「ありがとう」

感謝の気持ちを考えたり言葉にして伝えたりすると、脳の中では「オキシトシン」という物質が分泌されます。オキシトシン「愛情ホルモン」「絆ホルモン」とも呼ばれ、人との信頼関係や仲の良さを深める働きがあります。あなたが感謝を伝えることで相手の脳内でもオキシトシンが分泌され、あなたに対して良い感情を抱きやすくなります。

【具体例】
コンビニで店員さんに「ありがとうございます」と伝える。友達に些細なことを助けてもらった時に「○○、さっきは助かったよ。ありがとう!」と具体的に伝える。この小さな行動の積み重ねが、あなたの周りに「あなたを助けたい」「あなたに協力したい」と感じる人々を増やしていきます。困った時に周りから自然とサポートが得られるような、良い人間関係のネットワークが築かれていくのです。

「今の自分に、できることは何だろう?」

これは、脳の意識モードを、状況をただ眺めているだけの「傍観者」から、状況に主体的に関わる「当事者」へと、強制的に切り替える、最もパワフルな問いかけです。
「問題だ」と嘆いているだけの状態では、脳は省エネモードで積極的には働きません。しかし、自分が解決する主役であると認識した瞬間、脳は問題解決のためにその能力をフル稼働させ始めます。

【具体例】
部活の大会で、大事な試合に負けてしまったとします。「相手が強すぎた」「審判が良くなかった」と考える代わりに、「この悔しい状況で、今の自分にできることは何だろう?」と問いかけてみましょう。すると脳は、「自分の苦手なプレーを、毎日10分だけ追加で練習してみよう」「次の試合までに、相手チームの戦術を研究してみよう」といった、明日からすぐに行動に移せる具体的なアイデアを考え始めます。受け身の姿勢から能動的なプレイヤーへと変わる瞬間です。


【最終章】あなたは、あなたの思考の最高責任者である

この記事の結論は、とてもシンプルです。
あなたが「運」や「運命」と呼んでいたものの正体は、あなたがこれまで選んできた数えきれないほどの思考が、脳の中に「思考のクセ」という道を作り、あなたを自動的に動かしてきた「結果」に過ぎません。

過去の思考が、今のあなたという現実を作りましたこの事実は、タイムマシンでもない限り変えることはできません。

しかしここには、希望に満ちた真実が隠されています。
それは、「あなたの未来は、あなたがこれから選ぶ『思考』によって、自由自在にデザインできる」ということです。

もはやあなたは自分の人生の、ただの乗客ではありません。
あなたはこの瞬間から、自分の思考という心の「設定」を、自由に変えることができます。まるでスマホやPCを自分好みにカスタマイズする「管理者」のように、あなた自身の人生を思い通りに創っていく力を持っているのです。

あなたには自分の思考を選ぶ自由があります。
そして、その選択がもたらす結果を引き受ける責任があります。

これまでの無意識な自動操縦を、今ここで止めてみてください。
そして、自分の手で思考のハンドルを握るのです。

今、この瞬間。
あなたは、あなたの望む未来のためにどのような思考を選択しますか?

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