【BSS】「僕が先に好きだったのに」という権利主張と現実逃避についての考察

僕が先に好きだったのに好きな女性が彼氏と歩いているのを目撃した瞬間
目次

注意:本記事の内容について

本記事は、俗にBSS(僕が先に好きだったのに)と呼ばれる状況、状態における当事者の心理について考察し、「僕が先に好きだったのに」と感じてしまう心の仕組みについて考える内容です。

本記事における「BSS」という用語の定義

本記事では便宜上「BSS」という言葉を、「彼女に先に恋した自分こそが本来の恋人であるべきである、という合理的根拠のない権利主張と、彼女へアプローチする権利を行使しなかった自らの落ち度を黙殺する、意図的な現実逃避が一体となった精神状態」と定義して話を進めます。

予約席のない映画館

あなたは映画館にいます。上映されるのは、あなたがずっと心待ちにしていたきらきらした青春の物語。

あなたは、ロビーのポスターを眺めているだけで満足でした。「いつか、あの中に入ってみたいな」とチケットも買わずに、ただ夢見ていたのです。

あなたの視線の先にいる彼女は、まるで映画のヒロインのようでした。 あなたは知っています。彼女が笑うタイミングも、少し困った時に眉をひそめる癖も、全部。

映画館のロビーにいる僕が先に好きだった女性

彼女という、自分だけの特別な映画をロビーの隅から観ているだけのあなたは、誰よりも熱心な観客でした。

ところがある日、事態は急変します。

あなたの隣で同じようにポスターを眺めていたはずの男が、なんの躊躇もなくチケットカウンターに歩いていき、チケットを2枚買ったのです。

そして彼は、あなたが心の中で「いつか隣に座りたい」と願っていたヒロインの、その手を引いて劇場の中へ消えていきました。

劇場の中へ消えていく2人

今、あなたの胸に渦巻いている感情。

理不尽で苦しくて、世界が憎らしくなるような得体の知れない感情。それが「僕が先に好きだったのに」です。

本記事では、その感情の仕組みを上演してまいります。


なぜあなたのポップコーンは、横から奪われてしまったのか

先に好きだったのは、おそらくはあなたです。彼女の魅力を誰よりも早く発見したのも、あなたかもしれません。

それなのに、なぜあなたの隣には誰も座らず、急に現れた彼の隣で物語は始まってしまったのでしょう。この悲劇の原因を分析していきます。

理由1:あなたは「観たい」と願っていただけだった

これが、残酷なまでにシンプルな一つ目の答えです。あなたは、チケットを買っていませんでした。

「好きだ」という気持ちは、心の中で育てる植物のようなものです。毎日水をやり、太陽の光を浴びせ、あなたは丁寧に育ててきたことでしょう。しかし、その美しい花をあなたは誰にも見せていなかったのです。

「いつか話しかけよう」は、「まだ話しかけない」と同じ意味です。「目で追う」だけでは、彼女の視界にあなたは映りません。心の中で彼女に送ったエールは、残念ながら届きません。

僕が先に好きだった女性が遂に具現化した状態

恋愛は、心を読み合う能力者の集いではありませんでした。

あなたが「好きだ」という気持ちをチケットに変え、カウンターに提示しない限り、あなたはずっとロビーにいる観客のままです。

彼は、ただチケットを買った。それだけです。

あなたが心の中で上映していた壮大な予告編よりも、彼が買った一枚のチケットの方が、この世界では強かった。ただそれだけのことです。

理由2:そもそも「あなたの席」ではなかったという動かせない事実

ここが、一番受け入れがたいポイントかもしれません。あなたは、心の中で彼女の隣の席を「自分の席」だと思い込んでいました。毎日眺めていたから。誰よりもその席の価値を知っていたから。

ですが、基本的に恋愛に予約席は存在しません。それは全席自由席、早い者勝ちの椅子取りゲームに似ています。

「先に好きだった」という事実は、「先にその椅子に座りたいと願っていた」という以上の意味を持ちません。願いの強さや、願い始めたタイミングは、残念ながらルールブックには書かれていないのです。

誰かの心を「自分のもの」だと仮定した瞬間に、この苦しみは生まれます。彼女の心は、最初から誰のものでもありませんでした。

発見した素敵な公園のベンチに先に座られてしまった状況

あなたが発見した素敵な公園のベンチは、あなただけのものではないのです。
後から来た誰かがそこに座ったとしても、その人を責めることはできません。

【心理学の小部屋】「自分のもの」だと錯覚する脳のクセ

ここで少し、「僕が先に好きだったのに」と考えた時の脳の中で何が起きているのかを覗いてみます。実は、人間には「保有効果」という、面白い心のクセがあります。

これは、自分が一度「自分のものだ」と感じたものに対して、客観的な価値よりもずっと高い価値を感じてしまう心理現象です。

例えば、何の変哲もないマグカップも、あなたが買った瞬間から「私のマグカップ」となり、同じものが店に並んでいるのを見るのとは、わけが違ってきます。

日常に浸透した僕が先に好きだった女性がプリントされたマグカップ

「僕が先に好きだったのに」と考えたあなたの場合、こうです。

あなたは、彼女のことをずっと見つめてきました。

彼女の情報を集め、彼女について考え、心の中で多くの時間を共有しました。

そのプロセスを通じて、あなたの脳は無意識のうちに彼女を、「自分のテリトリーにいる存在」だと認識し始めていたのです。

つまり、まだ告白もしていない、付き合ってもいない、それどころか、ろくにお互いをよく知らないかもしれない段階で、あなたの心は勝手に彼女を「自分のものになりつつある存在」としてカウントしていた。

だから、実際に彼女が誰かのものになった時、「持っていたものを奪われた」という、強い喪失感と怒りを感じてしまうのです。

しかし冷静になってみると、先に好きだっただけでまだ何も手にしていませんでした。
これは、脳が見せた壮大な勘違いだったのです。


嫉妬と悔しさの正体、その中身とは

あなたの心を乱す、どす黒い「僕が先に好きだったのに」という感情の塊。

それを丁寧に分解して、中身が何でできているのかを観察してみましょう。正体が分かれば対処法も見えてきます。

成分分析①:「好意の先行者利益」という幻想

あなたは、こう考えているかもしれません。

「誰よりも先に彼女の魅力に気づいた自分には、何らかの優先権があるはずだ」

ビジネスの世界では、「先行者利益」という言葉があります。市場にいち早く参入した者が有利なポジションを築ける、という考え方です。

しかし、恋愛はビジネスではありません。

彼女の心を、未開拓の市場か何かのように捉える発想そのものが、苦しみの始まりです。

「先に好きになった」という功績は、学校の成績にも、就職活動のエントリーシートにも書くことはできません。それは、ただあなたの中だけで完結する、個人的な記憶です。

その記憶に、他人を縛る効力はありません。

ましてや、彼女の心を動かす優先権など、どこにも存在しないのです。

この幻想から目覚めることが、最初のステップです。

成分分析②:失った未来への「もったいない」という縛り(サンクコスト効果)

次に、あなたの心を蝕んでいるのは「もったいない」という感情です。これは、「サンクコスト効果(埋没費用)」と呼ばれる心理です。

これは、すでにつぎ込んでしまったお金や時間、労力を惜しんで、合理的ではない判断を続けてしまう心の罠です。

「これだけ課金したのだから、このゲームはやめられない」
「こんなに長く付き合ったのだから、今さら別れられない」

これらはすべて、サンクコストの影響です。

あなたの場合、つぎ込んだのは「時間」と「想い」です。
彼女を想って過ごした、たくさんの時間。
彼女のために考えた、無数の会話シミュレーション。
もしかしたら、という淡い期待を胸に過ごした日々。
これらすべてが、あなたの心の中で「見えないコスト」として計上されています。

彼女が他の誰かのものになった瞬間、この莫大なコストがすべて回収不能な「損失」として確定しました。

莫大なコストがすべて回収不能な「損失」として確定した男性

だからあなたは、「これだけ想ってきたのに、何も得られなかったなんて、もったいない!」と、強烈な悔しさを感じているのです。

しかしサンクコストは、その名の通り「埋没」した、つまりもう戻ってこない費用です。

それなのに、私たちはこの戻ってこないものに未来の決断まで縛られてしまうのです。

成分分析③:物語の主人公から降ろされた少年の痛み

これが、最も本質的な痛みかもしれません。

あなたは、あなた自身の人生という物語の、絶対的な主人公です。

そして片思いをしている間、あなたは「彼女をヒロインにしたラブストーリー」の主人公でもありました。

いつか彼女と結ばれるハッピーエンドを、心のスクリーンに何度も何度も映写してきたはずです。

障害を乗り越え、ライバルに打ち勝ち、最後に彼女の手を取る。

そんな王道の物語の主役は、他の誰でもないあなたでした。

ところが、現実はどうでしょう。

あなたは主人公のポジションから引きずり降ろされました。

それどころか、物語はあなたの知らないところで勝手に始まり、あなたは名前のない「通行人A」にされてしまったのです。

心のスクリーンに何度も何度も映写してきた僕が先に好きだった女性とのハッピーエンド

自分の物語のコントロールを失った感覚。

主役の座を奪われたという屈辱。

このどうにもならない無力感と自己肯定感の崩壊が、あなたの胸を締め付ける痛みの核心です。

「僕が先に好きだったのに」という言葉の裏には、「この物語の主役は、僕だったはずなのに」という、心の底からの叫びが隠されているのです。


このやるせない気持ちを、どこへやればいいのか会議

さて、原因と正体が判明しました。

では、この沸騰したヤカンのように厄介な感情を、どう処理すればいいのでしょうか。
いくつかのフェーズに分けて対処していきましょう。

フェーズ1:感情を出し切る。涙と枕の正しい関係

まず、絶対にやってはいけないことがあります。

それは、「こんなことで落ち込むなんてダサい」と、自分の感情に蓋をすることです。

感情は生ゴミと似ています。蓋をして見ないふりをしても、それは消えてなくなりません。むしろ中でどんどん腐敗して、いずれ強烈な悪臭を放ちます。

だから、まずはしっかりとその感情を出し切ってください。以下は具体例です。

  • 安全な場所を確保します。 自分の部屋などが最適です。
  • 枕を用意します。涙と叫びを吸収してくれる最高の相棒です(限度があるので注意)。
  • 思いきり泣き叫びます。「なんでだよ!」「俺の方が!」のように、思ったことをそのまま口に出して泣けるうちに泣いておきましょう。言葉にすることで、感情は少しだけ客観視できます。枕に顔を埋めて叫べば、誰にも迷惑はかかりません(限度があるので注意)。
僕が先に好きだった女性を撮影して制作した抱き枕

このステップは一見、馬鹿げているように見えるかもしれません。

しかし、自分の感情を一度、身体の外に出してあげる作業は、心の健康を保つ上で非常に重要です。

溜め込んだ感情のダムを、意図的に決壊させてあげるのです。

満足いくまでやってください。一晩で終わらなければ、二晩かけたって何晩かけたって構いません。これは、次のステップに進むための大切な準備運動です。

フェーズ2:観測と思考の分離。心に「実況チャンネル」を作る

感情の濁流が少し落ち着いたら、次のフェーズです。自分の心を、他人事のように実況中継してみましょう。これは、マインドフルネスの考え方を応用したテクニックです。

自分の感情や思考を、ただ「観測」するのです。

例えば、ふと二人のことを思い出して胸が苦しくなったら、心の中でこう実況します。

  • 「おっと、ここで○○選手、過去の記憶がフラッシュバック。胸部に強い痛みを感じている模様です」
  • 「おお、出ました!『もしもあの時、自分が声をかけていれば…』という、得意のタラレバ攻撃だーっ!」

ポイントは、その感情や思考に評価を加えないことです。

「こんなこと考えるなんて最低だ。情けない」とか「まだ引きずってるなんて女々しい」といったジャッジは一切不要です。

あなたは、ただのスポーツ実況アナウンサー。出来事を淡々と描写するだけです。

これを繰り返していると、不思議なことが起こります。「苦しんでいる自分」と、「それを観測している自分」の間に、小さな距離が生まれるのです。

感情の渦に完全に飲み込まれている状態から、一歩だけ外に出て、それを眺めているような感覚。
この小さな距離が、あなたの心を冷静さを取り戻すための大切な足がかりになります。

フェーズ3:再起動の合言葉。「だから、どうした?」と呟いてみる

感情を出し切り、観測に慣れてきたら仕上げです。自分の中でこの言葉を使ってみましょう。

「だから、どうした?」

「だから、どうした?」と自分につぶやく男性

悔しさや嫉妬がこみ上げてきたら、その感情の語尾にこの言葉を追加してみてください。

  • 「僕が先に、彼女を好きだったんだ…だから、どうした?
  • 「あいつは、俺から彼女を奪ったんだ…だから、どうした?
  • 「あの時ああしていれば、未来は変わっていたかもしれない…だから、どうした?

これは、自暴自棄になれと言っているのではありません。

変えられない過去や、自分ではコントロールできない他人の心に、エネルギーを注ぎ続けることの不毛さを、自分自身に教えてあげるための言葉です。

「先に好きだった」というのは、おそらくは事実です。
しかし、その事実が今のあなたを幸せにしてくれますか?
その事実を訴えたところで、物語の結末は変わりますか?

答えはノーです。

「だから、どうした?」という言葉は、過去への執着という鎖を、断ち切るためのものなのです。

何度も心の中で呟くことであなたの意識は、変えられない過去から、これから自分で作っていける「未来」へと、強制的に方向転換させられていきます。


次の映画祭で最高の席に座りたいあなたへ

今回の映画は、残念ながら満席でした。

あなたは切ない思いを抱えて劇場の外に立っているかもしれません。

しかし、人生という映画祭はこれで終わりではありません。次々と新作が公開されます。

最後に、次の映画祭で、あなたが最高の席に座るために忘れないでほしいことをお伝えします。

あなたは「登場人物」から、「物語を選ぶ人」になる

あなたは今まで、特定の「ヒロイン」が登場する物語に、自分をキャスティングしようと必死だったかもしれません。

しかし、その必要はもうありません。

これからのあなたは、物語の登場人物であると同時に、どの物語を観るか、どの物語に参加するかを選ぶ、観客であり監督でもあるのです。

世界には、無数の物語(出会い)があります。あなたが主役になれる物語は、一つではありません。

アクション、コメディ、ヒューマンドラマ。あなたが好きになれるヒロインも、一人だけとは限りません。

一つの映画館の前で立ち尽くすのは、もうおしまいです。

街には、あなたの知らない映画館がまだまだたくさんあります。

「好き」の矢印は、いつでもあなたから放たれる

「好き」というあなた自身の心から生まれる感情の矢印の主導権は、100%あなたが握っています。今回、あなたは矢を放つこと(距離を縮めること)を躊躇しました。

その結果、的は他の射手によって射抜かれました。

矢が的に当たるかどうかは、分かりません。外れるかもしれないし、強風に流されるかもしれない。もしかしたら、なぜか的が突然消えてしまうことだってあるでしょう。

しかし、確かなことが一つだけあります。

放たれなかった矢は、絶対に的には当たらない

「僕が先に好きだったのに」という悔しさは、あなたが誰かを本気で好きになれるという素晴らしい才能の証明でもあります。

そのエネルギーを、過去への嘆きに使うのはとてももったいないことではないでしょうか。

次の恋という、まだ誰も観たことのない映画のチケットを、「このチケットを買うために必要なことは何だろう?」と自分なりに答えを出して買いに行ってみてください。

あわせて読みたい
【告白ハラスメントゾンビ】非モテ特有の「告って一発逆転」幻想が生む告ハラモンスター覚醒録 その告白、感動の物語ですか?それとも不審者からの奇襲攻撃ですか?あなたの「好き」という純粋な感情が、なぜ相手を追い詰める「告ハラ」に変わるのか解き明かします。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次